皆さんは、どの「ウェブブラウザ」を使用していますか?
実はこんなこと、意識していない方が多いのではないかと思います。今回はそのウェブブラウザのお話をしましょう。
そもそもウェブブラウザって何?
「ウェブブラウザ」というのは、インターネット上のウェブサイトを見るときに使うアプリケーションのことです。単に「ブラウザ」と呼ぶこともあります(以下「ブラウザ」と呼びます)。
皆さんが目にするウェブサイトは、デザインが整ったきれいな画面です。ですが、実際にはHTMLというマークアップ言語で記述されたファイルやCSSというデザイン指定が記述されたファイルなどで構成されています。HTMLとCSSはいわば設計図のようなもので、文書構造と、文章や画像の配置や色、大きさ、などのデザイン指定が、ひたすらテキストで記述されています。
ブラウザの役目のひとつは、この設計図通りにデザインを再現して画面上に表示することです。HTMLやCSSの文法で文字で書かれた設計図を、ブラウザが画面デザインに翻訳してしてくれるわけです。
ブラウザって意識したことがないんだけど……
「ウェブサイトを見るときは『インターネット』というアイコンをクリックするだけで『ブラウザ』なんて知らない……」という方も多いと思いますが、実際には、そのアイコンをクリックするとブラウザが起動しているのです。
なぜあまりブラウザの存在を意識することがないのでしょうか? それは、パソコンを買うと最初からブラウザアプリケーションが入っているからです。多くの人は、あらかじめパソコンに入っていたブラウザを使うので、他にもブラウザがあるということを知りません。
パソコンにはOS(オペレーションシステム)という基本的なシステムがあり、その上に様々なアプリケーションをインストールして使います。OSは、Windows(Microsoft社)かMac(Apple社)のどちらかを使っている人が多いでしょう。どちらのOSにも自社製のブラウザがありOSと一体化しているように見えるので、OSと同じ会社のブラウザしか使えないと思っている人もいるかもしれません。
ですが、ブラウザはOSの上で動く独立したアプリケーションとして、他の会社からも提供されていて、別の会社のブラウザを使っても構わないのです。
ブラウザの種類
では、どんなブラウザがあるのでしょうか。
以下が代表的なブラウザです。左から順に、名前と会社をご紹介しましょう。
Chrome(クローム):Google社製
Safari(サファリ):Apple社製
Firefox(ファイヤーフォックス):Mozilla社製
Internet Explorer(インターネット エクスプローラー)※:Microsoft社製
Microsoft Edge(マイクロソフト エッジ):Microsoft社製
いずれも無料で配布されていて、ChromeとFirefoxは、Windows版とMac版の両方があります。現時点では、SafariはMac版のみ、Internet ExplorerとMicrosoft EdgeはWindows版のみが出ています(EdgeはiOS版有り)。
OSにかかわらずどのブラウザを使っても構わないし、複数のブラウザを入れておいて用途によって使い分けをしてもよいのです。
※現在、MicrosoftはInternet Explorerの最新版(バージョン11)しかサポートしていません。最新のOS(Windows 10)では、Microsoft Edgeを使用するよう推奨しています。
ブラウザによって翻訳/解釈できる内容に差がある
さきほど、ブラウザの役目のひとつを「設計図の翻訳をする」と表現しましたが、ブラウザによってHTMLやCSSの翻訳が微妙に違う場合があります。さらに、様々なサービスを動かすプログラムの解釈となると、ブラウザによっては十分に対応できないということもありえます。
例えば、新しいScratch3.0は、Internet Explorerでは使用できなくなりました。その理由は、Internet Explorerが少し古い独自仕様のため、Scratch3.0の開発に使われたいまどきのプログラムを翻訳できないからです。
逆に、過去にInternet Explorerに最適化して作られたシステムが、今さら他のブラウザで動くような大規模改修をすることもできず、Internet Explorerで使い続けるしかないという状況も生まれています。
もちろん、本来どのブラウザでも機能するサービスを開発するという基本姿勢があるべきですが、開発時の技術動向や予算に応じて、どのブラウザまで対応してどこは切り捨てるという判断は必ずするものです。サービスによって対応するブラウザが異なるのはある程度仕方の無いことです。
ブラウザはユーザーが選ぶという発想で
ここは、ユーザーである皆さんの方が一歩かしこく立ち回る必要があります。ユーザー側が「ブラウザを選ぶ/使いわける」という感覚を持つことです。
もし、Internet Explorerしか使えないシステムを利用していたとしても、他の用途にまでInternet Explorerを使う必要はありません。パソコンにChromeなど他のブラウザも入れておいて、例えばScratch3.0を使うときは他のブラウザを使えばいいのです。
今年1月にScratchがアップデートして以降、「学校のパソコンにはInternet Explorerしか入っていないからScratch3.0が使えない」という声を何度も聞きました。ブラウザなんて無料の軽いアプリケーションですから、この機会にPCを一括でメンテナンスして別のブラウザをインストールしてはどうでしょうか。
Internet Explorerには、他にもmicro:bitのプログラミングをする際にシミュレーターの音声機能が使えないなどの制約がすでにあります。今後出てくるウェブ経由のツールはInternet Explorerに非対応のものが増える可能性がさらに高まるでしょう。
要望をあげることから始まる
学校などで、勝手にアプリケーションをインストールできないという声ももちろん聞きますが、個人にインストールが許可されていないということ自体は、学校のPC環境を一括管理するという点で批判されることではないでしょう。
自分にはインストール権限がないという理由だけで諦めるのではなく、それならば、権限をもっているところにぜひ要望をあげて、Internet Explorer以外のブラウザをインストールしてもらってください。
インストールできない理由は、担当者の権限の問題だけでなく、一括管理システムの設定上の制約など、個別に事情が違うでしょう。事情によっては、要望を出したところですぐに実現しないケースもあると思います。
ただ、相手が人であれ組織の構造であれ、販売システムであれ、まずは正しいルートで要望をあげなければ、変わる一歩目も踏み出せません。
なにも高価なアプリケーションを購入しようというわけではありません。無料で一般的に広く利用されている「単なるブラウザ」をほんのひとつインストールするだけです。
変化の激しい世の中で力を発揮できる人を育てようという学校現場が、今起きている変化に対応できないのでは困ります。ブラウザのインストール程度の変化に対応できない人的構造やシステムを抱えているならば、それらを柔らかくするきっかけにぜひして欲しいと思います。
狩野 さやか
Studio947のデザイナー・ライター。デザイン・ウェブ制作全般を担当する一方、技術書籍の執筆や、教育のICT活用・子ども向けプログラミングについての取材・執筆をしている。著書に『ひらめき!プログラミングワールド』『見た目にこだわるJimdo入門』『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』。
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