ツールと学びがぴったり!〜特別支援学級でイモムシ型ロボット「コード・A・ピラー」が大活躍

狩野 さやか

2019年1月18日(金)に文京区立湯島小学校で、研究発表会「みんなを笑顔にするプログラミング的思考の育成〜『湯島情報科』を軸としたカリキュラム・マネジメント」が開催されました。湯島小学校は平成30・31年度東京都プログラミング教育推進校に指定されていて、当日は大変多くの来場者で各教室があふれました。

当日は、全ての学級でプログラミングの授業を行い、学年ごとに異なるツールを活用していましたが、その中でも特別支援学級で行われた授業をご紹介したいと思います。

イモムシ型ロボット「コード・A・ピラー」

特別支援学級で使っていたのは、「コード・A・ピラー」というイモムシ型のプログラミングロボットです。

プログラミングロボ コード・A・ピラー

イモムシのボディをバラバラにすることができて、前進、右を向く、左を向く、などの矢印が色わけされたボディをひと節ずつ接続することで、動きをプログラムします。接続されたボディの指示の分だけ、ロボットはゆっくりと動きます。
特別支援学級でのコード・A・ピラー

このイモムシ型ロボットを、有名なエリック・カールの絵本「はらぺこあおむし」になぞらえ、「はらぺこあおむしにおいしいものをたくさん食べさせよう!」というストーリーで課題に挑戦しました。

ていねいなステップでプログラムを考える

オレンジやチョコケーキを食べるために、スタート地点からどうやって進んだらいいだろうか、と考えるのがミッション。いきなりロボットを使うのではなく、ゆっくり考え確かめながら進めるように、3つのステップをふみます。

特別支援学級でのコード・A・ピラー

(1)「考えるコーナー」〜見通しを立てて手順を設計

まずは「考えるコーナー」。机上で先生が用意した教材を使って、図中に矢印の指示を並べて、ゴールの「おいしいもの」に到着するルートを考えます。さらに、文字で書かれた指示を並べて使ってフローチャート式に置き換えます。教材は、矢印や文字の手順を簡単につけはずしをして試行錯誤しやすいように工夫して作られています。これでまずは手順の設計をして見通しを立てました

特別支援学級でのコード・A・ピラー

(2)「おためしコーナー」〜手順通りに自分で動いてみる

次は赤の線で床にマス目が描かれた「おためしコーナー」へ。自分があおむしの代わりになってスタート地点に立ち、さきほど自分で考えた通りの手順でコースを歩いてみます。うまく到着できなければもう一度考えます。無事に「おいしいもの」に到着できたら成功で、最後のステップへ。

特別支援学級でのコード・A・ピラー

(3)「あおむしコーナー」〜ロボットにその手順を伝える

最後は青の線で描かれた「あおむしコーナー」です。ついに、ロボット「コード・A・ピラー」に自分の考えた手順をプログラムします。イモムシロボットの頭部分に、自分の決めたプログラムの順で、ボディを選び、手順の分だけつないでいきます。これは、自分で考えた手順通りに手作業を行うという練習にもなります。

特別支援学級でのコード・A・ピラー

特別支援学級は、子どもの人数に対して先生の数が多く、全体への説明の時間が終わったら、ひとりひとりの特性に合わせて1人〜数名にひとりの先生がつき、ていねいに対話しながら進めていきました。ひとつひとつのステップを、じっくり体感しながら進めて、うまくいかなければ「あれぇ?」、成功したら「やったぁ!」と全身で表現している子どもたちの様子がとても印象的でした。

「コード・A・ピラー」の何が良かったのか?

「コード・A・ピラー」の良いところは、なんといっても、プログラムするツールと本体が一体化していることです。プログラムする操作盤と本体が分かれているロボットや、タブレット端末などのアプリからプログラムするロボットもたくさんありますが、それらと比べてより直感的に扱うことができます。

また、一体型でも、本体についた矢印ボタンを押して動きを登録していくようなタイプのロボットは、登録した手順を一覧表示できないのでプログムを可視化することができません。ロボットが期待通りに動かなかった時に、登録時のボタンの押し方のミスなのか、プログラム設計自体の問題なのかを切り分けるには、プログラムが見えることは重要です。その点、「コード・A・ピラー」は、本体のボディそのものがプログラムを可視化しているわけなので、大変直感的です。

実際のモノに触ってボディのつけはずしをしたり、そのモノが本当に動くということが、特に特別支援学級ではプラスに働いていて、これがもしロボットではなく画面の中で完結するようなアプリを使用してプログラミングをやっていたら、子どもたちの様子は全く違っていたのではないかと思います。

見た目の親しみやすさなどの存在感や動機付けも重要なポイントです。この日は、授業の最初に学校行事で歌ったことのある「はらぺこあおむし」の歌を全員で歌ってスタートし、絵本のストーリーである曜日ごとに違う食べ物を食べるという内容が、そのまま授業の課題につながりました。

学びにあったツールの選択が重要なポイントになる

全体として、子どもたちのペースと、授業のストーリーと、選んだプログラムツールのバランスがとても良く、ツールが学びにぴったり合っているという印象を受けました。授業をどう設計して、どんなツールを選んで、実際にどう現場でサポートするかで学びの質は変化します。ツールだけが用意されていてもバランスの良い学びは成立しませんから、授業づくりをした先生方の力があってこそです。

プログラミングは新しい分野なので、どうしても「ツールありき」で課題が設定されていたり、「課題ありき」でツールの選び方に無理を感じるケースを目にすることもあります。この授業にはそうした違和感がなく、また、ロボットというツールがあるからこそ、子どもたちの理解と意欲が深まっている様子が自然とにじみ出ていました。

ツールはふさわしいシーンで使われてこそ何倍も力を発揮します。こんな風に、ツールの特性と学びの内容がお互いを活かし合うような授業が増えると良いな、と改めて感じました。

狩野 さやか
Studio947のデザイナー・ライター。デザイン・ウェブ制作全般を担当する一方、技術書籍の執筆や、ICT教育・子ども向けプログラミングについての取材・執筆をしている。著書に『見た目にこだわるJimdo入門』『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』。

コメント

2件のコメント

  1. 義務教育で教えようとしているプログラミング教育は「(間違いのない?)工程指示手順書を生成すること」なのでしょうか?
     ものづくりの基本ですね。
     論理おもちゃを使うことで子どもたちは面白がるとおもいますが、ゲームや工作をなどをやってみることでも手順書は作れます。
     文科省が、日本が産業としてのプログラミング技術で世界に後れを取っている、としている意味合いと、どう繋がるのかよくわからないのですが。

    1. この授業例へのコメントではなく、文部科学省が義務教育でプログラミングをどう位置づけているのかということについてのご疑問かと存じます。新学習指導要領でどのようにプログラミングを扱っているのかを、学習指導要領、学習指導要領解説、関連資料(簡単なパンフレットから小学校プログラミング教育の手引まで複数公開されております)などをお読みいただくのが、一番わかりやすいので是非ご覧になってみてください。

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