子ども達がプログラミング学習用ロボットキットembotで作った作品の展覧会が2024年8月24日(土)にお台場で開催されました。
「embot大展覧会」はembotを使った作品であれば誰でも出展できて、たくさんの人に見てもらったりインタビューを受けたり、審査員の先生からコメントをもらったりと、とてもスペシャルな経験ができるイベントです。プログラミング初心者も熟練者も一緒に混ざって自分の作品を紹介します。お台場の明るく気持ちのよい会場が、工作プログラミングを楽しむ子ども達のあたたかい作品であふれ、穏やかな時間が過ぎました。
この大展覧会では、審査を経て賞も決まるのですが、この記事では結果には触れずに気になった作品たちをご紹介していきます。embotのウェブサイトに公式の大展覧会特集ページと、応募作品が見られる図鑑があるので、詳細はぜひ公式ページでチェックしてみてください。
シンプルだけど発想が光る!テッポウウオ
まずはこちら、私がかなり心を動かされたのがこちらのテッポウウオ。プログラムをスタートすると段ボールで作ったテッポウウオから水がぴゅっと飛び出して前方に描かれた虫を捕らえます。
プログラムも構造もシンプルで、プログラムが実行されるとサーボが一定の角度動いて元に戻るというもの。サーボがピッと動いた瞬間に、中に設置してあるスポイトをキュッと押して水を放ちます。一度プログラムを実行したら、スポイトを取り出してまたスポイトに水をためてセットし直すという方式。出展者は小さなお子さんで、保護者の方がスポイトに水をためては再設置を繰り返して活躍している姿が、ある意味作品の一部のような感じでほほ笑ましかったです。
アナログ部分が多くて素朴で、これは意外と簡単には思いつかないタイプの発想かも……! と感じました。
タブレットの傾きセンサーで操作して釣り竿を動かす!
次は、本当に水を張ってある魚釣りゲームです。磁石で魚を釣るというスタイルは定番ですが、本当に水が貼ってあるのでかなり気持ちが盛り上がります。また、釣り竿を動かすプログラムに、タブレットの傾きを使っているので、ちょうど釣り竿の角度とタブレットの角度が合って、釣りをしている臨場感が生まれます。
タブレットとの連動で釣り竿用の棒を動かすところまでは思いついたとしても、このダイナミックな感じの楽しい釣り遊びにするためにはけっこう調整が必要だったのではないかな……? 棒を動かす角度や糸の長さ、そこにつける磁石の重みとの関係などのバランスで動きがかなり変わると思うので、いい感じに楽しめる動きにするのは意外と大変だったのではないかと思いました。そして、本物の水ですから、開発中は家の中があちこち水浸しになったのでは!……そういうところも作る楽しさのうちですね。
なお、ゲームは一定時間経つまで何度も挑戦出来て、時間が過ぎると動かせなくなるようにプログラムされているので、順番に遊ぶ時にもけんかにならずにすみます。制作者が、遊びに立ち寄るほかの参加者が楽しめるようにサポートしている姿が印象的でした。
シンプルだけれど動きの工夫が素敵
工作プログラミングは、必ずしも凝ったプログラミングができなくても、工作部分の見せ方やちょっとした工夫でとても素敵な演出ができるのも、楽しいところです。
例えばこちらの「ねこピーちゃん」は、手に持っているものが長かったりくねっとしたりしているので、手が動くとけっこう派手に余韻のある動きが実現できていました。ファッションもちょっと大人っぽくて素敵です。
また、こちらの生物「サメルドン」も、ヒレの部分がちょっと不思議な感じの動きをしていて目が光って、このロボットを作りたかった気持ちがよく伝わってきました。フェルト生地で覆ったことで独特の生物感が出ています。
また、かわいらしいうさぎが2体の「ごはんをたべさせてくれるみうちゃん」という作品は、ママうさぎのトレーにご飯を置くと子どもうさぎのトレーにご飯を渡すというしくみ。ママうさぎの背を高くしてスムーズに受け渡しができるように工夫していました。
ここでは紹介しきれませんが、どの作品にもこんなふうに作りたいものへの気持ちが詰まっているのがembot大展覧会の特徴です。
手作りおもちゃ作家佐藤蕗さんの作品も!
額田代表と共に進行役としてイベントを盛り上げた手作りおもちゃ作家の佐藤蕗さんの作品も展示されていました。蕗さんの作品は、誰もが挑戦できるシンプルなプログラムで生み出す基本的な動きを、発想力と工作の力でくすりと笑ってしまうようなシーンにしてしまうところが秀逸です。
なお、佐藤蕗さんの作品は、当サイトでもレシピと共に特集していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。プログラミングは、ツールが変わっても同じことを実現できる場合がほとんどですから、embotでも同じ考え方で同じものを作れるので、とても参考になりますよ。
プログラムも工作もレベルが高い作品も!
ひとりでたくさんの作品を展示している参加者も。プラレールのポイント切り替えをできるようにしたり、駐車場を再現したり、さらにはオリジナルの楽器まで。それぞれに工夫がありました。
着用できる作品も。こちらの「恐竜ジャケット」は、気温に応じてファンがまわるというしくみ。帽子部分にコアやセンサーなどをセットしてあります。気温が一定を越えるとファンが動き出し、気温が高いほどファンの回るスピードが速くなります。気温に応じて表示が変わる暑さメーターもついています。新しい「embot+」では外部接続センサーを使用できるようになりましたから、こんな風に作品の幅が広がります。恐竜姿のジャケットデザインも素敵でした。
そしてこちらはなんと「コインゲーム」。台が前後に動き続ける動きはクランク機構で実現していて、サーボの回転を前後の動きに変えています。上部のコインを入れる場所は左右にジョイスティックで動かせるのですが、ここはサーボの回転でキャタピラを動かして左右の動きを作り出しました。また、うまくボールが落とせると、落ちていった通路の先に超音波センサーがついていて、サウンドが鳴るのと同時にボーナスコインが大量に落ちるしかけもついています。
工作による仕組みもプログラムも盛りだくさんで、多くの人の目を惹きつけていました。
コインもひとつひとつ段ボールで作成していて、根気のいる制作過程だったことと思います。ここまでできたら、ぜひembotを卒業して、さらにディープな電子工作やロボット製作に踏み込んでみると、さらに世界が広がるのではないかと思います!!
ここではほんの一部しか紹介できていませんが、子ども達の作りたい気持ちが自然とあふれた素敵な作品が大集合していて、工作とプログラミングがシームレスな感じがとても素敵な大展覧会でした。これからも、やりたい!作りたい!という気持ちを大切に、プログラミングを楽しんでいきましょう!!
狩野 さやか
Studio947のデザイナー・ライター。デザイン・ウェブ制作全般を担当する一方、技術書籍の執筆や、教育のICT活用・子ども向けプログラミングについての取材・執筆をしている。著書に『ひらめき!プログラミングワールド』『見た目にこだわるJimdo入門』『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』。
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